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Hecho En Cuba

■ – Hecho En Cuba  Dominic Miller & Manolito Simonet 

■ Musicians ■

Dominic Miller(ドミニク・ミラー):Acourstic,Erectoric Guitar
■ Manolito Simonet(マノリト・シモーネ):Piano

■ Andy Abad Acosta:(Piano),Roberto Vásquez "El Chino"(Ba),Robin Félix Martínez/Rafael Arboláez(Trumpets),Leonardo Alarcon/Ivanois Garzón(Trombones),David Bencomo Guedes(Flute),Roicel Riverón(Drums),Evelio Ramos(Comgas),Ricardo Amaray Fernández(Vo:Track 1),Pancho Amat(Tres:Track 8),Dayron Ortega(G:Track 8),Jose Francisco Amat(Double Bass:Track 8),William Borrego(Maracas:Track 8)
■ Strings on Track 6 "Chanson 1",Nicolás Gastón & Camerata Escuela National de Arte

・Recording - Studios Simonet(Cuba)May.2012
・Mixed and Mastered at - Estudios Manzana(Spain) April.2013
・Mastered at Skyline Tonfabriik(Ger/Düsseldorf)2013
・Producer - Dominic Miller
・Mixed and Mastered By – Carlos Más
・Mastered By – Kai Blankenberg

■ Songs ■

01. La Belle Dame Sans Regrets-(Vocal)(3:18)
02. Embrace(4:01)
03. Tokyo(3:31)
04. Shape of My Heart(3:45)
05. La Boca(3:38)
06. Chanson I(4:25)
07. D'Pronto(6:05)
08. Lullaby To An Anxious Child(3:06)
09. La Belle Dame Sans Regrets-(Instrumental)(3:17)

Written By:Dominic Miller
Except:Tracks:4,8(Dominic Miller,Sting),Track:7(Manolito Simone)
       

■ Release ■

■ Release Date:5.6.2016
■ Rabel:Q-Rious Music(Germany)
■ Number:QRM 136
■ CD,Album

■ Comentary ■

2016年にリリースされた、キューバのトップ・サルサ・ユニット「マノリート・シモネ & ス・トラブーコ」を率いるピアニスト、マノリート・シモネとのデュオ名義のアルバムです。

マノリート・シモネとドミニクの出会いは2012年ごろ、ドイツでツアー中にツアー中だったマノリートコンサートに招かれ、そこでジャムセッションをしたのがキッカケだったようです。

ドミニクはその時の事をこのように話しています。「ドイツでマノリートに会い、私たちの音楽スタイルはまったく異なっていましたが、最初の瞬間から私たちの間はすぐに心が通じ合いました。だからこそ、一緒に実験してこのアルバムを作ることに決めたのです。」

キューバ音楽について

サルサの起源はキューバ音楽が最初にアメリカに渡り、ニューヨークのヒスパニック系住民によってジャズと組み合わされ作られました。その後サルサは世界中に広まり、国によって様々なスタイルのサルサがあります。
その中でもキューバで独自に進化した、よりリズムが複雑になり強烈になったサルサを「ティンバ(Timba)」といいます。そのティンバの名手としてキューバ国内で人気が高いのがマノリート・シモネです。マノリートのティンバは伝統的なものを活かしつつ彼にしか出来ない洗練されたアレンジを加えたもので、彼が率いるス・トラブーコはキューバのトップ・サルサ・ユニットとなっています。

ドミニクは最近のインタビューでも「恐らくキューバは国全体の音楽レベルが世界で最も高いだろう」と言っていますし、ドミニクの盟友であるキーボーディストのマイク・リンダップもその音楽に大きく影響を受けているようです。

ドミニクは2015年のキューバ訪問時に「スティングは数年前に一度ここに来たことがあり、彼の方が早く来たからとても羨ましかった」と語っていますし、更に2022年のキューバ訪問時に現地で受けたインタビューでもはっきりこのように言っています。

「ハバナへの訪問はこれで 3 回目です。 私の知っているミュージシャンは皆、キューバに来て演奏したいと思っています。もしキューバの誰かが招待してくれたら、言い訳はできません。 誰もが来ます。誰もがここに来たがっているからです。世界中の私が知っているミュージシャン全員がキューバに来て演奏したいと思っています。」

http://www.lajiribilla.cu/dominic-miller-todos-los-musicos-que-conozco-quieren-venir-a-tocar-a-cuba/

その時のインタビューについてはドミニクはかなり幅広い話題に答えており、とても読み応えがあるので、別に投稿しましたので是非ご覧ください。(こちら

サルサについて

しかし、日本人の皆さんはどのくらいサルサという音楽を実際に聴いたことがあるでしょうか?ちゃんと聴いたことある人は意外に少ないんじゃないでしょうか?私が最初にサルサをちゃんと聴いたきっかけは、あの世界的に大流行となった、ライ・クーダーが紹介した「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」です。これは映画を見たりアルバムを聴いたのであって、私は実際に見たわけではありません。

でも、私はその後もライブハウスにサルサ音楽を観に行ったりしています。 というのも、私が昔から応援している日本の有名なロックベーシスト1が、実は最初はサルサ音楽からプロミュージシャンとして活動を始めた人で、彼がベーシストとして所属しているサルサバンド(Salsa Swingoza2Video)のコンサートに何度も行ったことがあるからです。 だから私はサルサは好きです。 力強いリズムとパワフルなサウンドは一度ハマるとかなり中毒性があると思います。 しかし、私はサルサ音楽やキューバ音楽を完全に理解しているとは言い難いと思います。かなり複雑な事をやっている音楽だと思います。

折角なのでちょっとだけ簡単に勉強がてらサルサという音楽の特徴について説明したいと思います。結構ややこしいんですよ。だからものすごく乱暴なおおざっぱな説明ですので、本気で知りたい人は自分で調べてくださいね。

まず、サルサの基本のリズムは「クラーベ(Clave)」というものです。これはラテン音楽特有のリズムパターンです。スペイン語で「鍵」を意味し、文字通りラテン音楽を理解する上での重要な鍵となります。このクラーベは楽曲の土台となるリズムで、もうこれは常にベースとしてあるものです。サルサはパーカッションやピアノ、ベースのパターンはもちろん、歌のメロディやホーンのフレーズまで全てクラーベの上に成り立っています。

このクラーベには「ソン・クラーベ(Son Clave)」と「ルンバ・クラーベ(Rumba Clave)」がありますが、キューバの伝統的なルンバや「ティンバ(Timba)」と呼ばれるキューバのサルサの基本リズムは「ルンバ・クラーベ(Rumba Clave)」なります。クラーベの面白いところは「一度始まったクラーベのパターンは止まることがなく、順番が入れ替わることもない」という点です。
ですからパーカッションはもちろん、ホーンやコーラスまで全ての楽器のパターンがずっと続くクラーベのリズムと上手く噛み合うようにできています。色んな楽器がサルサでは非常に複雑に組み合わさって展開されますが、全てはクラーベが「鍵」という事なんですね。

で、実はそのクラーベのリズムパターンの上にさらに演奏されるリズムパターンがあります。それが「トゥンバオ(Tumbao)」です。サルサでは、ティンバレスにもボンゴにも、楽器ごとにリズムパターンがあります。複雑ですねー!しかし、その各楽器が持つリズムの中でもクラーベと共に演奏の土台となる重要なリズムパターンがあり、それがピアノ、ベース、コンガによって演奏されるトゥンバオです。この「トゥンバオ(Tumbao)」とクラーベのリズムの複雑に組み合わされて展開されるのがサルサの醍醐味と言ってもいいでしょう。で、意外な事に最近のティンバ・ユニットにはギターが居ないことも多いそうです。

そして、ドミニクがキューバのミュージシャン達の演奏で最も驚いたのがピアニストの音楽的レベルの高さだそうです。一人が傑出してすごいわけではなく、平均レベルが驚嘆すべきものだ、として上にも上げた2022年のインタビューで話しています。

以上、物凄い雑な説明ですみませんが、このくらいで勘弁してください(笑)

曲について

曲に関しては、7曲目のD’Prontoだけがマノリート・シモネによるもので、それ以外の曲は以前にドミニクのアルバムに収録された曲がサルサ・アレンジで再録されています。「D'Pronto」はめちゃくちゃかっこいい曲です。ドミニクがこれほどエレキを思い切り弾いているのは珍しいです。ラリー・カールトンばりに弾いてますよね。素晴らしい!実に爽快です!

「La Belle Dame Sans Regrets」は邦題は「悔いなき美女」です。Stingの『マーキュリー・フォーリング』に収録された曲で、ドミニクのソロでは『Forth Wall』のボーナス・トラックや様々な形で収録している曲です。これはドミニクがボサ・ノヴァの帝王、アントニオ・カルロス・ジョビンに捧げた曲です。一見ラブソングのように思えるこの曲ですが、スティングがこの曲につけたフランス語の歌詞は、当時、フランスが東南アジアで行った核実験に抗議する内容になっていて、この「自分のやっている事を後悔しない美女」とはフランスを指しているのだそうです。あと、この曲に関しては昔、ドミニクが「この曲を演奏するのは結構難しいよ」と言ってたのを記憶しています。それはブラジルスタイルのギターの奏法を「難しい」と言っているのだと思います。

他に「Embrace」「Tokyo」『5th House』から、「La Boca」『First Touch』から、「Chanson I」『November』「Lullaby To An Anxious Child」『Second Nature』「Shape of My Heart」についてはもう特に説明は不要でしょう。

サルサは日本人は最初少し聞き慣れないかもしれないけど、騙されたと思って一度聞いてみてほしいと思います。結構面白いので、意外に気にいるかもしれないですよ。

Dominic's Comments

「マノリート・シモネとの出会いについて」:私はヨーロッパでマノリートに会いました。 私は私のグループとツアー中でしたが、彼もオーケストラとともにツアーに参加していました。アントニオ・マルティネス(キューバのJAZZ フェス主催会社の会長)は私のマネージャーに電話してきて、著名なキューバの音楽家がいて、彼のコンサートに私たちを招待していると伝えました。 それで私は彼の演奏を見に行き、ジャムセッションをして、つながりを作りました。音楽とはそういうもので、私たちはみんなつながっているからです。 彼のバンドと演奏するのはとても楽しかったです。2 曲と 20 分のアンコールをやりました。それがすべての始まりでした。

「マノリート・シモネからドミニクとの共作について」:主だったテーマはギターを目立たせることであり、ミラーの音楽をキューバ音楽に近づけることであったため、これは歌曲を1曲だけ含むインストアルバムであると指摘した。ティンバレスとドラムを使用したのは、ミラーの曲をオーケストレーションするのが非常に複雑だったため、それがミラーの作品に最も適した楽器だと思われたからです。

■ Video ■

Concierto de Dominic Miller en Cuba - Fábrica de Arte Cubano (FAC)

これが2015年、キューバで行われたドミニクとマリノート・シモーネ達との実際のコンサートの映像です。いやもう、めちゃくちゃカッコいいですね。私はこれは今すぐにこの会場に行きたいくらいに大好きですね。このアルバム『Hecho En Cuba』からの曲を演奏していますが、やはり実際の演奏の方が数段いいとおもいます。ドミニクが「彼らの音楽の水準はとても高い」というのがよくわかります。曲は「Lullaby To An Anxious Child」-「 Tokyo」-「Shape of My Heart」- このアルバムには収録されていない「Catalan」-「La Belle Dame Sans Regrets」-「Embrace」-「La Boca」が演奏されています。

■ Review-1 ■

レビュー:ギタリストのドミニク・ミラーは、ピアニストのマノリート・シモネとともにエキサイティングなバンドを率い、キューバの横丁をたっぷりと案内してくれる。アンディ・アバド・アコスタ/p、ロベルト・バスケス/b、ライセル・リベロン/dr、エヴェリオ・ラモス/percのバンドに、ロビン・フェリス・マルティネス/tp、ラファエル・アルボラエス/tp、レオナルド・アラコン/tb、 La Belle Sans Regrets "ではミラーがクラシック・ギターを弾き、ファンキーな "Tokyo "ではミラーがエレキ・ギターの音を曲げ、バズエスが親指でエレキ・ベースを叩く。シェイプ・オブ・マイ・ハート」では、ホーン・セクションがミラーの穏やかなドラムに合わせて息を吹き返し、外向的な「D'Pronto」ではリベロンが軽快なキーボードをドライブする。Chanson "では素敵なストリングスが薄手のナイトガウンのようなドレープを奏で、"Lullaby To An Anxious Child "ではパンコ・アマットのトレスがロミオとジュリエットのようなスモーキングで伝統的なサウンドを提供している。Jazz Weekly- George W. Harris 】

  1. 日本を代表するロック・ギタリスト、Charさんと長く一緒に活動をしている澤田浩史さんの事です。 ↩︎
  2. Salsa Swingozaとは、バンドマスターである日本を代表するパーカッショニスト・大儀見元(オルケスタ・デ・ラ・ルスの創始者)がデ・ラ・ルスを脱退後に立ち上げた、日本を代表するサルサ・バンドである。 ↩︎
  3. This is Hiroshi Sawada, who has worked with Char, one of Japan's leading rock guitarists, for a long time. ↩︎