■ Second Nature ■
■ Musicians ■
■ Dominic Miller(ドミニク・ミラー):G ■ Manu Katché(マヌ・カチェ):Ds/Tracks(3,4,6,7) ■ Pino Palladino(ピノ・パラディーノ):Ba/Tracks(2,3,6,7,9,10,11) ■ Adam Glasser(アダム・グラッサー):Harmonica/Tracks(6,9) ■ David Heath(デヴィッド・ヒース):Flute/Tracks(4) ■ Mike Lindup(マイク・リンダップ):Key/Tracks(10) ■ Gus Isdore(ガス・イシドール):Steel Strings Guitar/Tracks(4) ■ Miles Bould(マイルス・ボールド):Percussion/Tracks(6) ■ Yovo(ヨーヴォ):Percussion/Tracks(4) ・Recording - (London,Paris,1999) ・Producer - Dominic Miller ・Mixed By – Laurent Lozahic at Zorrino(Paris) ・Mastered By – Frédéric Marin at Elcyon Musique(Paris)
■ Songs ■
01. Introduction(1:01) 02. Truco(2:50) 03. When I Close My Eyes(4:09) 04. Foi Boa(6:18) 05. If(1:57) 06. Unify(4:31) 07. Rest in Peace(3:25) 08. Lullaby To An Anxious Child(1:36) 09. A Cause(3:19) 10. Quiero Decirte(4:00) 11. In A Whisper(4:31) 12. The Last Song(3:57) All Songs:by Dominic MIller Except:'Truco'by Dominic and Pino Palladino. 'When I Close My Eyes'by Dominic, Manu, Pino. 'Lullaby To An Anxious Child'by Dominic,Sting. Words:'Quiero Decirte' by Diego Kovadloff. 'The Last Song' by E.J.
■ First Release ■
■ Release Date:1999 ■ Rabel:Rutis Music Ltd,BMG(UK) ■ Number:DOM3CD ■ CD,Vynal,Cassette
■ Reissue ■
■ Release Date:4.23.2004 ■ Rabel:Q-Rious Music(Germany) ■ Number:QRM 105-2 ■ CD,Vynal
Commentary
1998年からアルバムの制作に入った、ドミニクの2枚目のソロアルバムです。ですから1997年に終わったスティングの「マーキュリー・フォーリング・ツアー」の時から構想に入っていたと思われます。このアルバムも名曲揃いです。 ドミニクによる、各曲の詳しい解説は下の「Dominic's comments」欄をご覧ください。 「Truco」は本当にドミニクのギターのタッピングがカッコいい彼の代表曲でしょう。ですから今もライブのラストの盛り上がりの所で演奏されます。 「Foi Boa」については後日、ドミニクはこのように語っています。「これが最初に録音したものだ。もう二度と会えないかもしれないと知りながら、愛する人に出会い、もっと知りたいと思い、もっともっと愛したいと思う経験について書かれている。愛のようなものの記憶は、その行為よりも意味があるという主題についてだ。それは憧れについてだ。」なんというかすごいロマンチストですよね(笑) 続く「If」は「この曲はもともと、『もし誰かを愛せるとしたら、それはあなただけ』という意味だった。」と言っています。なんというか、こんな事を言われてみたいもんです(笑) 「Quiero Decirte」については「このアルバムのために最初に書いた曲なんだ。意味は『伝えたい』。誰かに愛していることを伝えたいけど、恥ずかしかったり、準備ができていなかったりすることを歌っているんだ。」と語っています。 アコースティック・ギターというのは本当にロマンチックな楽器だと思うので、ロマンチストであるドミニクがギターを選んだのは当然なのかもしれないですね。 あと、ドミニクが誰かのカヴァーを自分のアルバムに収録する事はとても珍しいですが、最後のエルトン・ジョンの「The Last Song」は彼がとても演奏したかった、というだけあって本当に素晴らしい美しい曲になっています。この曲では2本のギターで歌のパートとギターパートとして演奏されています。 「Lullaby To An Anxious Child」はスティングの「If On A Winter's Night...」(2009)にスティングの歌詞が付けられて収録されます。このパターンは結構ありますが、個人的にはわりと「ドミニクの曲に歌詞は必要ないと思う派」です。その理由は別にスティングの歌や歌詞が気に入らないという訳ではなく、ドミニクのインストルメンタル曲はそれ自体で十分物語性があるので、歌詞が載せられると「過剰」だと感じる時もあるからです。勿論、「Shape of My Heart」のようにスティングの歌が加わって大成功になる場合もある。これは完全に個人的な見解ですからスティングのファンの方は怒らないでくださいね、ほんとに。 実際にこの曲の造られた背景をドミニクはこう言っています。 「スティングがこの曲に参加する前から、この曲は完成していたんだ。彼が歌詞を書き、私が曲(とメロディ)を書いた。この曲は、和声とリズムが非常に南米的(特にベネズエラとペルー的)なアプローチで、私も強く共感している。1991年/1992年のソウル・ケージ・ツアー中、日本のホテルの部屋で書いたんだ。」 へえ、日本にいる時に書いたんですね。あのツアーはスティングが喉の調子を悪くして、恐らく半分くらいの公演がキャンセルになった記憶があるので、ドミニクも少し想定外の時間があったのかもしれないですね。もう今では来日すれば取材攻めで大変だと思いますけれど。 とにかく、このアルバムは「Truco」のような、かなりスピード感のある曲もあるためか、非常にドミニクの幅広い音楽性を強く感じるアルバムで、私はとても好きな作品です。
ちょっと意外な話
実は私が持っている日本の雑誌「Player 1996年11月号」のインタビューでドミニクははっきりこのように言っていたんです。
「まだスティングには伝えていないけど、このツアー(マーキュリー・フォーリング・ツアー)で彼とは最後になるだろうと思う。成功してお金を稼ぐことにはもう快感を覚えないんだよ。自分をもう一度しっかり見つめ直す必要があると思うんだ。誰か他の人の為に演奏するという事に、もう喜びを感じないんだよ。ツアーが終わったらしばらくは今後の人生で自分が何をすべきかを考えたいと思ってる。」
当時のドミニクは1988年くらいから10年間、超多忙な売れっ子セッションマンとして他人の為に演奏し、駆け抜けてきた生活だったと思います。ただ、彼は単なる他人の要求に応えるだけのセッションマンなのではなく、優れた作曲能力を持つコンポーザーでもあります。ですから私はその時の彼は少し「自分自身が本来持っている歌」を見失いかけていたのかな、と思いました。そして少し休んでその「彼自身の歌」を取り戻す必要があったのかな、と想像しています。
しかし現実には2023年の今も彼はスティングの横にいます。何故ドミニクにとっての「PLAN B」の選択をすることになったのか、これは私私には全くわからない事です。
Dominic’s comments
『Second Nature』は『First Touch』とは違う。同じような作品にはしたくなかった。それは私のする事ではないので。 明らかに多くの人が私に同じようなレコードやインストルメンタル曲のリストを作ることを望んでいました。『First Touch』はその名の通り、第1弾であり、ある意味『Second Nature』への前奏曲だった。もっとサウンドとテクスチャーを使いたかったのですが…ドラムにマヌ・カチェを起用しました。彼はドラム演奏だけでなく音楽性も含めてこのアルバムに多大な貢献をしてくれました。ベースにはピノ・パラディーノ、ハーモニカにはアダム・グラッサー、そして1曲だけフルートを使いましたがテクスチャーが違うだけです。音楽は同じ場所から来ています。 同じ作曲者、同じギタリストですが、おそらく(『First Touch』より)もう少し深いものです。 確かに私はブラジリアンスタイルをもう少し取り入れました。 ワールドカップ(※1998年フランスワールドカップ)の最中にアルバムを作り始めたんですが、明らかにサッカー、天気、ブラジルにかなり影響を受けました! 冬が来て、影響は再び変化しました…。
私が書くすべての曲のメロディーは常にボーカルです。『First Touch』と『Second Nature』でお聞きいただけるとわかるように、私は 2 つのギターパートを演奏します。 左側にメロディー、右側にハーモニーみたいな感じでやります。ソロライブでは、この2つを組み合わせて演奏するようにしています。ソロ曲もいくつかありますが、それほど多くはありません。しかし、メロディーは通常、私の頭の中にあります。それらは「歌われ」ており、したがって「息」があります。 時々、歌うことを考えてみますが、それは私のキャリアの終わりになると思います。
「Truco」はアルゼンチンのカードゲームの名前です。かなり攻撃的なカードゲームで、叫び声や怒号が飛び交う。ポーカーとブリッジの中間のようなものです。私はブエノスアイレスにいて、ウォークマンを持って、このバーに座っていた。ブエノスアイレスの人たちはとても騒がしくて、叫び声や怒鳴り声、怒号が飛び交っているんだ。隣に座っていた何人かがカードゲームをしていて、ウェイターやガチャガチャという音や一般的な雑音をカセット1本分録音したのを覚えています。この熱狂的な曲を書くきっかけとなったのは、ピノが素晴らしいビバップを演奏する速いリフです。ベース・パートを1オクターブ高く弾き直せないかと彼に頼んだら彼はまったく問題ありませんでした。 したがって、このトラックを聞くと、オクターバーではなく、2本のベースになっていることがわかります。ギターもデチューンしました。 ベースのE弦はDに下がり、D弦はCに下がり、私はそのようなハーモニックタッピングのようなものを使ったんだ。 それからドラムマシンが一種のドラムンベースのリフとともに入ってきます。あれは楽しかったね。
「Quiero Decirte」とは、『あなたに伝えたい』という意味で、完全にブラジルの曲だ。ワールドカップの時に書かれた曲で、典型的なボサノヴァのようなものだ。バリー・ホワイトがよくやっていた『ヘイ、ベイビー、僕は…』というような歌詞が好きだったから、そこに物語性を持たせようと思って、友人のディエゴ・コヴァドロフ(Diego Kovadloff)に怪しいスペイン語の詩を書いてもらったんだ。たぶん一生後悔するでしょう。スペイン語でバリー・ホワイトをやりたかっただけです。
「In A Whisper」はマヌとピノと一緒にライヴ・レコーディングしました。この曲はスチール弦ギターを使いました。公式にはこの曲がアルバムのラスト・トラックなんだけど、「本当の」最後の曲はエルトン・ジョンのアルバム『The One』からの「The Last Song」という曲です。私はいつもこの曲が好きだった。私はエルトン・ジョンの大ファンではないんだけど、でもまず第一に奇抜でオモシロイと思ったんだ。ずっとカヴァーをやりたいと思っていて、たまたまエルトン・ジョンの曲だったんだけど、すごくすごく好きな曲だったからそれを最後に入れました。メロディーを一音一音コピーしたんですが、それがギターにとてもうまく行きました。
■ Video ■
この「Truco」のベルリンでのライブの動画は個人的に非常に好きな動画です。めちゃくちゃカッコいいですよね。ドミニクの旧友であるドラムのマイルス・ボウルドと、長い音楽的パートナーであるベースのニコラスのコンビの強烈なグルーヴが曲を最高に盛り上げてますよね。ライブならではの醍醐味がこれでもか、と感じられる動画だと思います。こんな凄い演奏を間近で見られたら幸せですよねぇ・・・。
■ Review-1 ■
レビュー:スティングのバンドの一員として、ギタリストのドミニク・ミラーは時に見過ごされることがある。この40歳のギタリストは、痩せこけたボサボサの髪でストラトを弾く若者のようなルックスをしているにもかかわらず、ギターの「あらゆる仕事をこなす男」としての役割では当然のことと思われているようだ。このことは、キーボード奏者のジェイソン・レベロやトランペッターのクリス・ボッティといったジャズ界の著名人たちも同行した、アルバート・ホールでの最近のスティングの一連のギグでより明白だった。そして今、ミラーのセカンドソロアルバムが登場し、彼にスポットライトが当たる時が来ました。 「Second Nature」は、この多才なブエノスアイレス生まれのミュージシャンのまったく異なる側面を示しています。 ミラーは何年もセッション・プレイヤーとしてロックンロールを演奏してきたかもしれないが、彼自身の音楽はブラジルの英雄アントニオ・カルロス・ジョビンとバーデン・パウエルに多大な恩義があり、その結果、ここに収録されている 12 曲は南米を歌っています。鳴り響く叙情的なナンバーが、自分のルーツに忠実であり続けるギタリストによって弾かれ、かき鳴らされています。【タイムズ紙 】
■ Review-2 ■
レビュー:ピーター・ガブリエル、シェリル・クロウ、ザ・プリテンダーズ、スティングらと共演する、恐ろしくセンスの良いサイドパーソン、ドミニク・ミラーは、このアルバムで、普段はボスが許しているよりも、むしろもっと伸び伸びと演奏するチャンスを得た。伴奏者によるインストゥルメンタル・アルバムはいつも焦点が欠けているが、ミラーは偉大なソングライターとの交流を通じて、メロディこそが王様であることを学んだ。バンドが彼の後ろでジャズのように喉を鳴らしながら、特にアルバムの決定的に繊細な瞬間である「Unify」と「Foi Boa」で、彼は豊富なフックをトップに提供します。 優れた電話帳(ベーシストが必要ですか?ここにはピノ・パラディーノがいます)は、ミラーの疑いのない器用さが適切な音楽的文脈に配置されていることを意味し、この証拠に基づいて、彼が長期間仕事を離れることはありそうにありません。【Q Magazine ・ロブ・ビーティー】