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Electric Guitar-1

1961 Fender Stratocaster

Dominic Miller & SF Orchestra, Rok Golob - NOVEMBER

■ Commentary  ■

このギターは1996年からドミニクが使っていて、長い間、彼のメイン・ギターとして使われています。2022年から2023年3月までのスティングの「My Songs」ツアーでは2022年に購入された非常に美しいミント・コンディションのメイプル製の1968年製テレキャスターを使用していたけど、2023年6月からのツアーでこのストラトを再び使用しているようです。
でも先日見たらまたメイプルのテレキャスに戻っていました。正直、スティングのツアーの時、ドミニクがどのギターを選ぶかという選択基準は私にはよくわかりません。過去にドミニクはギターを沢山持って移動したくないから、世界各地にギターを分散して保管している、と言っていたので、その場所で使えるギターを使っているだけかもしれないです。

ギターのスペック

このギターは、1961年にフェンダーによって作られたPreCBSストラトキャスターです。ボディはアルダーウッドでできており、ネックはローズウッドとメープルで作られているようです。1959年から1962年初頭にかけて、ストラトキャスターはスラブネックと呼ばれ、ローズウッドはメープルネックに平らに貼り付けられています。それは厚く、ミドルレンジがよく出るギターです。色は3トーンサンバーストというカラーで、黄色の上に赤、赤の上に黒とグラデーションのように吹き付けられたカラーです。1959〜1962年まで同じ仕様のものが作られているのですが、1959年と1960年の個体は色褪せするものが多く赤みが残らないのですが61年から塗料が変わるので赤が褪色しづらくなっています。

これはヴィンテージなので、演奏されることによって作られた傷はなんともかっこいいです。しかし、このギターはドミニクの手によって改造しつくされているようです。例えばストラップ用のピンがオリジナルのものからロックピンといってライブなどで激しく弾いても外れないように作られているストラップピンに交換されているようです。

面白い裏話

しかしこのストラトについては面白い話があります。私が持っている昔の雑誌「PLAYER」1996年11月号での記事では次のように書いてあります。

【これは62年頃に作られたものだ。 62年というと、指板がフラット貼りからラウンド貼りになる年だが、このギターはフラット貼り。 60年代のストラトは50年代と比べより中音域が強調されたやや太くてマイルドなトーンが特徴となっている。ブルース系のギタリストに好まれているのもそのためだろう。ナットはカーボン素材のものに交換され、トレモロ・バーも交換されている。ボディにはかなりキズがあるが、いかにもヴィンテージらしい風格を持っている。 実はこのストラト、2年ほど前にあるスタジオの仕事をした時にプロデューサーにヴィンテージ・ギターでプレイして欲しいと言われ、ドミニクが「持ってない」と言ったらそのプロデューサーが捜してきてくれたらしい。しかもレコーディングが終了した時には、そのヴィンテージはみごとにドミニクのものになった。太っ腹なプロデューサーも居たもんだ!】

このストラトキャスターをドミニクに提供したの人はナッシュビルの有名なアーティストでプロデューサーのロドニー・クロウェルです。このストラトは元々ロドニーが所有していたようです。ドミニクはロドニーがプロデュースする1997年発売のベス・ニールセン・チャップマンのアルバム「 Sand and Water 」に参加していますのでその時の話ですね。

ちなみに61年ストラトの現在の相場は約500万円くらいです。すごっ!ドミニクは超ラッキーだね!

実はこのストラトの製造年についてですが、昔ドミニクは62年製と言ってた記憶があります。でも、最近色々な記事を見ると61年製だと言ってたりする。だからどっちが本当なのかよくわからない。ただ彼にしてみれば61年でも62年でも正直どうでもいい事だと思います。ドミニクはいい音を出す事に対するこだわりは物凄い人ですが、いわゆる機材にこだわる人では全くない。この違い、わかりますよね?だから製造年月日なんて彼にはきっとどうでもいい事だと思います・・・。もし、このヴィンテージ・ストラトよりも例えずっと新しくて安いギターでも、ドミニクにとってベストなサウンドのものがあれば、彼は迷わずそれを使うだろうと思います。

ドミニクとって一番大事なことは、「自分の右手の指の肉を使ったタッチでどれだけ美しい音が出せるか、どれだけ様々な表現が出来るか」という事です。ドミニクはマイクの位置やPAに色々注文をつけたりもしません。それはその専門家に任せます。
彼はただ、自分が考える理想の音を自分自身で出せるようにしたい、という人です。ドミニク・ミラーというミュージシャンはそれを追求している人です。そこの部分を絶対に間違えて認識してはいけないと思います。だから彼はエレキギターでも結構ピックを使わずに指で弾いているはずです。

ドミニクによると、このストラトは「ガラスのような音がする」とのこと。透明感があって繊細でクリーンな音、という意味でしょうかね?

※このギターに関する一部の情報、写真はインスタグラム・アカウント@stingthegearさんの内容を使用させていただきました。